ロジャー・フェデラーの強さ 徹底解説【史上最強のオールラウンダー】

選手解説

生ける伝説、史上最強のオールラウンダー ロジャー・フェデラー。テニスをやったことのない方ですら名前を知っている伝説的プレイヤー。男子テニス界は彼の台頭後大きくゲームのレベルが引き上げられました。今のハイレベルな男子テニス界を作った立役者と言って差し支えないフェデラー。皆さんよくご存じの選手ですが、改めて強さについて徹底解説していきたいと思います。

この記事でわかること

  • フェデラーの戦力分布詳細
  • フェデラーが台頭するまで誰もものにできていなかった超高速テニスの展開
  • フェデラーの代表的な戦術

10段階評価の考え方

選手評価の記事では共通して以下の10段階評価を用いて解説していこうと考えています。

★×1 :ATPツアー内で最下位レベル
★×2 :ATPツアー内で下位レベル
★×3 :かなりのウィークポイント:相手は積極的に狙う
★×4 :ややウィークポイント:相手は余裕があれば狙う
★×5 :世界で標準的なレベル
★×6 :世界で100位レベル
★×7 :世界で30位レベル
★×8 :世界で10位以内レベル
★×9 :世界でトップレベル
★×10:世界No.1レベル

能力評価

フォアハンドストローク:★★★★★★★★★★
バックハンドストローク:★★★★★★★☆☆☆
サーブ        :★★★★★★★★★★
リターン       :★★★★★★☆☆☆☆
ネットプレー     :★★★★★★★★★★
タッチ        :★★★★★★★★★★
パワー        :★★★★★★★★☆☆
スピード       :★★★★★★★★★★
戦略         :★★★★★★★★★★
キャッチコピー    :史上最強のオールラウンダー

10段階評価の10が6つもついてしまうという、チートキャラのような能力になってしまいました・・・でも間違ってないと思います。

てにおじ
てにおじ

史上最強のオールラウンダー。スピーディな展開や華麗なショットで見ている人を魅了する選手です。フェデラーを見ているとテニスって簡単なんじゃないかと錯覚してしまいます。

フォアハンドストローク

世界で一番うまいと思います。特にフェデラーの回り込みフォアハンドの逆クロスについては、あまりにもあっさりとエースになってしまい、凄すぎて逆に凄くないように見えてしまうことすらあります。

大きく分けてフェデラーの逆クロスには3種類あって、攻撃の際には2つ目か3つ目のテクニックを使用しており、打つ位置とコースは大体このあたりです。

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1つ目は展開を作るエッグボール気味の逆クロス(最もポピュラーな逆クロスです)
2つ目は浅い位置にスピンをかけて落とす攻撃的な逆クロス
3つ目は浅い位置にフラットで打つ攻撃的な逆クロス

それにしてもフェデラーの逆クロスって簡単にエース取りすぎじゃない?そう感じる方、多いはずです。コースはもちろんいいものの、同じようなコースに打つ選手は他にもいますし、世界一速い球を打っているわけでもない。何故か簡単そうにエース取ります。

隠されたスキルについて語っていきます。

なぜフェデラーの逆クロスは決まりやすいのか

理由は2つあります。

  1. タイミング抜群
  2. 意識外の軌道

それぞれ解説します。

タイミング抜群

これはフェデラーが逆クロスを使って攻撃する際、通常よりもさらにタイミングを上げ、相手がしっかりと守備の構えをとる前にコースをついてしまうという点です。
その技術を体感したことのある方はわかると思いますが、構える前に打たれると1歩目を踏み出せず、「届く距離に見えるのに身体が流れて触れない」状態になります。相手が体勢を整え切っていない間を作り出し、そこを突くスキルにフェデラーはとても長けています。

意識外の軌道

「浅い位置を狙うときにはスピンを掛ける」というテニスの常識の外にあるショット(↑で紹介した3つ目のテクニック)を打つことができる点です。テニスというスポーツは球の回転やコースの組み合わせが無数にあり、すべてのショットに打たれてから動き始めていては対応しきれません。そのため相手のポジションや構え、テニスの常識を常に頭に入れて予測するということを無意識にやっています。
その予測をする際に「浅い位置に早いフラットの球が来るだろう」ということは普通は予測しません。なぜなら非常にリスクの高い攻撃手段のため、普通相手はその選択は取らないだろうというテニスの常識があるからです。
ただ、フェデラーはこのテニスの常識の外にあるショットのクオリティが高く、サイドラインの浅い箇所に対してフラット系ショットをコンスタントに打つことができます。
相手選手はテニスの常識外の配球をされるため、一歩目が遅れてしまいます。

フェデラーはこの2つのスキルをうまく組み合わせて、フォアハンド逆クロスでエースを量産しています。

バックハンドストローク

LONDON, ENGLAND – NOVEMBER 09: Roger Federer of Switzerland plays a backhand during practice ahead of the Nitto ATP Finals at The O2 Arena on November 09, 2019 in London, England. (Photo by Justin Setterfield/Getty Images)

唯一の弱点と言われてますが、フェデラーの中で相対的に見たら強い部分ではないというだけで、世界上位クラスのスキルはしっかり持っています
おそらくナダルにバックハンドをいじめられている様を見て弱点と評されているかと思いますが、フェデラーが負けているというよりも片手バックハンドという技術自体がナダルに非常に相性が悪いというだけに過ぎません。
その証拠に対ナダル以外であれば、バックハンドでそれほどディスアドバンテージをとっているということはそれほどありません。

確かにデビュー当初2000年前半くらいまではバックハンドのミスヒットが多く、若干安定しない印象ではありましたが、年々バックハンドの技術は向上し続け、2010年代後半からはバックハンドからもポイントをとる場面が増えるようになりました。

面を作る技術の高さはバックハンドでも健在で、ベースライン付近や体から離れた打点であっても、うまくラケットを使ってしっかりと威力のあるボールを返球できています。

また、スライスの技術が非常に高く、低いボールの処理が異常にうまいナダル以外にはスライスを試合の中で非常に効果的に使用できており、相手にとってはとりあえずバックを起点にせめておけばOKなんてショットではもちろんありません。

サーブ

最高です。まぎれもなく世界トップクラスのサーブ技術を持っています。その中でも特筆すべきはコースの良さと、球種を隠す技術の高さです。
苦手な球種やコースは全くなく、どんなコース×球種でもすべて打ち分けることができています。
コースを隠す技術についても非常にレベルが高く、トスの位置や体の向きからサーブの球種もコースも全く読めません。静止画にしても読めません。(例外的にスピンサーブについては球種が別にばれてもいいのでわかります)

サーブはテニスのショットの中で最もスピードの速いショットですから、相手にいかに打つ前に情報を与えないかということは非常に大事なことです。ただコースがいいだけでは相手は慣れてきたり読んできたりするので、効果が持続しません。
フェデラーのサーブが世界最速なわけではないのにエースはビックサーバーたちと並べても見劣りしないのはコースをつく技術とコースを隠す技術が非常にハイレベルで共存しているからです。

リターン

リターンは相手にとって脅威には特になっているショットではありません。
面を合わせるスキルが高く、ボールをとらえるタイミングが非常に速いので、派手さはあるのですが、相手の足元をえぐるような深さのリターンを量産できたり、リターンエースを量産したりするタイプのリターンはなく、見た目ほど相手への脅威になっているショットにはなっていません。

ただ、フェデラーはブレークを狙わないゲームではあまりリターンゲームで動きを見せず、ブレークチャンスがあるタイミングで一気に仕掛ける駆け引きが非常にうまいです。
そのため、リターンでの相手に与えている平均的なプレッシャーという意味ではそれほど評価は高くなりませんが、ブレーク自体は効果的にできているという印象もあります。

この駆け引きはフェデラーの揺さぶりに慣れていない選手に対しては非常に有効に働いていますが、ジョコビッチやナダルなどフェデラーの揺さぶりに慣れている選手に対してはやはりリターンの地力の差が見え、ブレークをなかなかさせてもらえないという状況をよく見ます。

ネットプレー

ダブルスの名手を入れても世界で一番うまいと思います。どのボレーをとっても世界一うまいので、けちのつけようがありません。

フェデラーのボレーで特徴的なのはバックボレー時の右足の使い方です。試合を見ているとフェデラーのバックボレー時の右足の踏み込みの音の大きさが目立ちます。この踏み込み音からわかることとしては2つあり

  • 体重をしっかりと乗せてボレーが打てているということ
  • 体重を乗せられる体勢を作った状態でボレーを打てているということ

一つ目は打ち方の話で、大きく踏み出して体重を乗せられているということは、ラケットを振らなくてもラケットが動いた軌道が長くなるということです。ということは、ラケットを振る幅を減らして面にしっかり当てられる+体が動いているからその分ボールを飛ばせるという一石二鳥な素敵なフォームだということです。

二つ目は打ち方ではなく、ボールへの入り方です、大きく足を踏み出せるということは、ボールをヒットするポジションをあらかじめ予測したうえでしっかりとボレーに入れているということです。ネットに近すぎたり、遠すぎたりすると足を踏み出して良い形を作ってヒットするなんてことをしてる場合ではないので、こういったフォームは作れません。

フェデラーのボレーのうまさは単なるタッチの良さだけではなく、合理的なフォームとボールへの入り方の良さから生まれているということがステップ時の音からもよくわかります。

タッチ

これも世界一うまいと思います。面を作るうまさ、スライスやドロップショットといったタッチを要求されるショット、誰をとっても一級品です。

特にタッチの良さが光るのは打点が体から離れた場面でのタッチです。

通常、打点が体から離れれば離れるほどショットの制御は難しくなります。しかし、フェデラーはやっと届いたボレーや、コートの端に追いやられた場面でのスライスの切り返しなどに置いても非常に細かな制御ができています。

これは見ていてかなりわかりやすい凄さなので、スーパープレイ集とかにもよく取り上げられていますね。

パワー

パワープレイヤーではありませんが、クレーコート以外ではパワーに屈するような場面はほとんど見られません。仮にパワープレイを強いられても跳ね返すパワーは十分に持っていますし、何よりパワー対決にはさせない抜群の展開力を持っています。

ただ、クレーコートはもともとフェデラーのプレイスタイルとは少しマッチしていない部分があることから、パワー自慢のストローカーに押し切られてしまうという場面がごく稀に見られます。(ナダル、ワウリンカ、ソダーリングなど)

スピード

フェデラーは足の速さをウリにして守りが固いような選手ではないので、このスピードの評価は少し疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれません。

このスピードの評価はストロークやボレーの打点に入る際のスピードの高さを評価したものです。

フェデラー自身も自分の武器はフットワークと語っているように、打点に入る際のフットワークは非常に軽やかで素早いものを持っています。ショットの精度やテンポの速い展開に目が行きがちですが、フェデラーの打点に入る速さは世界トップクラスです。

特にフットワークの良さが目立つタイミングとしては回り込みフォアハンドと、フォアサイドからストレートに展開する際のフットワークです。

回り込みフォアハンドは分かりやすいと思います。回り込みをし始めるタイミングでは、流石にそれは回り込めないのでは?と思うボールも難なく回り込み、自分の打点でヒットしています。さらに、回り込みきれない時には背中方面にステップバックして、打点を合わせながら打つ非常に繊細な技術もよく見せます。この技術を使う選手自体は一般プレイヤーにもいるのですが、その正確性さは他プレイヤーの比になりません。

二つ目は文字だけだと伝わりづらいので絵で描きます。よく見せるタイミングとしては、フォアのクロス方向にうまく展開できた後に打点を上げながら展開する場面です。

このステップインするときのフットワークが非常に細かく丁寧なステップでかつ、正確です。動画などをよく見るとわかりますが、ステップインする際の右足の入れ方が非常にうまく、バウンドをうまく合わせてライジングでストレートへ展開できています。

この技術をストロークを主体とする選手の中で一般化したのはフェデラーが初めてであり、現在は多くの選手が使っていますが、それでもなおこの展開を世界で最も効果的に、正確に支えているのはフェデラーだと思います。それはこの優れたフットワークがあるからです。

戦略

戦略性も非常に高く、フェデラーがその戦略の効果を実証するまで、一般的ではなかったような戦略が沢山あります。正直3つに絞れないくらいフェデラーがもたらした戦術は多いのですが、代表的な3つを書きたいと思います。

徹底したテンポ上げ

最もテニス界がフェデラーの影響を受けたのはこの戦術だと思います。

今でこそ攻撃時にはライジングで時間を奪うという戦術はごくごく当たり前ですが、フェデラーがデビューした当時はスペインテニス全盛期で、「いかに質の高いボールを打つか」ということに重きが置かれていました。
今の時代のようなライジングらしいライジングはあまりなく、質の高いボールを打ち続け、相手が打ち損じたボールをコート内に入ってオープンコートへ展開するという戦略が一般的でした。

しかしフェデラーはこの当時のテニス界の常識を覆すようなアップテンポな展開をテニス界にもたらしました。相手が打ち損じたボールでなくても、少しでもコートの中に入れるタイミングがあればポジションをどんどんあげて前の方でボールをさばいていく。

その戦術がしっかりと形になり始めたのは2004年くらいからで、当時は誰もフェデラーのアップテンポな展開についていけず、それこそクレーのナダルくらいしかフェデラーに勝つことができない状況が3年くらい続きました。

世界のトップ層がついてすらいけないという状態が複数年続いたというのは本当に信じられないことで、当時からテニスの試合を観戦をよくしていた私からすると、当時のフェデラーは強すぎてつまらないという感想すら持つほどでした。

ショートスライス

「スライスは厚い当たりで深く」 これがテニス界の常識でした。
しかしフェデラーはこの常識の逆、つまり「回転量の多いスライスをクロス方向へ浅く」という戦術を活躍当初から多用しており、今でも使っています。

クロスコートつまりバックハンド側に浅く打たれた球威のないスライスは非常に厄介で、打点が低く、ネットに近いため強打できません。これがフォアハンドであれば、ひっかけて打つことでアプローチにつなげることができるのですが、フォアハンドに比べて打ち方の自由度の低いバックハンドではなかなかそうはいきません

ショートスライスを使われた相手は

  • スピンを多めにゆっくりしたショットを返す
  • ネットへアプローチする(強打できないのでスライスアプローチがほとんど)

のいずれかの選択を強いられます。

しかし、ゆっくりしたショットを返すとフェデラー得意の回り込みフォアハンドにやられ、アプローチをするとフェデラーのライジングでのパッシングの餌食になるというどうしようもない展開に相手選手は悩まされました。

当時この戦術に最もはまったのはロディックです。ロディックはバックハンドではスライスアプローチを多用していましたが、フェデラーに面白いようにパスを抜かれていました。

3球目攻撃の徹底

3球目攻撃つまり1球目:サーブ、2球目:リターン、の返球されたボールへの対応です。
フェデラーの高いサービスキープ率を支えているのはこの3球目攻撃の質の高さがあります。

スピードの項でもお話しした、クロス方向からの返球をストレートへ展開する戦術もこの一種で、フェデラーはこの手の展開を非常に多彩に使用してきます。

使用ギア

ラケット:プロスタッフRF97 オートグラフ Prostaff RF97 Autograph
ガット:メイン:ウィルソンナチュラル クロス:アルパワーラフ 大体55ポンド前後
ウェア:ユニクロ
シューズ:ナイキ

ラケットは一瞬真っ黒のものから白黒のものにしていましたが、あまりデザインが好きでなかったのか、すぐに黒一色のものに戻していました。

  • 超攻撃型のオールラウンダー
  • 様々な技術、戦略を用いて男子テニスツアーのレベルを引き上げた張本人

コメント

  1. […] クレー育ちということもあり、特にクレーコートでのフットワークは抜群です。また、↓の絵のように足が速くかつパワーのある選手しか使えないコート後方にポジションを下げながら返球するフットワークも稀に見せます。(赤い●がナダル、青い●がフェデラーの解説でもお話しした現代テニスのフットワーク) […]

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  4. […] このフォアハンドダウンザラインを使うパターンとボールへの入り方がフェデラーそっくりで、とてもスムーズです。是非機会があればこのパターンのチチパスとフェデラーを重ねてご覧になってみて下さい。(フェデラーのフォアハンドダウンザラインに関する詳細はフェデラーの解説記事で触れていますのでよろしければご覧になってください) […]

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