ロビン・ソダーリングの強さ徹底解説~ナダルに初めて全仏で勝利した男~【鈍足パワーヒッターの極み】

選手解説

100勝2敗 これが何の数字かわかりますか?

この記事を投稿した時点(2021年5月)でのラファエルナダルの全仏オープンの通算成績です。まさに土魔人と呼ぶにふさわしいとんでもない記録です。

ナダルは過去全仏で2敗(2009年、2015年)していますが、2015年のナダルは怪我の影響で大きく調子を崩しており、本調子にはかなり遠い状態でした。

となると2009年の敗戦って何?と気になりませんか?その相手がこの記事で紹介するロビン・ソダーリングです。おじさんは調子が上がっているナダルが全仏で負けたのはこの一戦のみだと思っていて、2009年のテニス界で間違いなく最も衝撃的なニュースでした。

前置きはこれくらいにして、ナダルに初めて全仏で勝利した男 ロビン・ソダーリングについて語っていきます。

この記事でわかること

  • ソダーリングの戦力分布詳細
  • 手先の器用でないソダーリングが世界トップに立つためにとった戦術

10段階評価の考え方

選手評価の記事では共通して以下の10段階評価を用いて解説していこうと考えています。

★×1 :ATPツアー内で最下位レベル
★×2 :ATPツアー内で下位レベル
★×3 :かなりのウィークポイント:相手は積極的に狙う
★×4 :ややウィークポイント:相手は余裕があれば狙う
★×5 :世界で標準的なレベル
★×6 :世界で100位レベル
★×7 :世界で30位レベル
★×8 :世界で10位以内レベル
★×9 :世界でトップレベル
★×10:世界No.1レベル

能力評価

鈍足ハードヒッターです。また、ボレーやドロップショットといったタッチショットのスキルもほぼなく、パワー1本で相手をなぎ倒す試合展開を得意とする戦士です。

ちなみにおじさんはこういう尖ったスキルを持つ選手が大好きです。プレステージを使っているのはソダーリングへの憧れもあります。笑

フォアハンドストローク:★★★★★★★★★★
バックハンドストローク:★★★★★★★★★☆
サーブ        :★★★★★★★★★★
リターン       :★★★★★★☆☆☆☆
ネットプレー     :★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
タッチ        :★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
パワー        :★★★★★★★★★★
スピード       :★★☆☆☆☆☆☆☆☆
戦略         :★★★★★★★★★☆
キャッチコピー    :鈍足パワーヒッターの極み

てにおじ
てにおじ

既に引退してしまっていますが、2009年に全世界のテニスファンを震撼させた驚異のパワーヒッターです。小細工を一切使わずにパワーボール1本で相手をなぎ倒していく様はとても印象に残っています。

フォアハンドストローク

めちゃめちゃかっこいいです。大きなテイクバックと分厚い当たりが特徴的で、コートのどこからでもエースを取れる破壊力を持っています。

引用元

グリップの握りはかなり厚い方で、腕の使い方はナダルやフェデラーのストレートアームのような使い方ではなく、ジョコビッチや錦織と同じダブルベンドといわれる使い方です。
(インパクト時に肘が伸びている=ストレートアーム 曲がっている=ダブルベンド)

コースは基本的にどこへでも打ち分けられますが、特に得意としていたのは↓の二つのショットです。

  • (図内黒矢印)展開を作る逆クロスでサービスラインとベースラインの間あたりへのスピン多めのショット
  • (図内赤矢印)ポイントを取りに行くストレート

私が見る限りでは、回り込みの逆クロスをフラット系で叩くようなショットは試合の中ではそれほど多く使っていませんでした。(もちろん打てますが積極的には使っていなかった)

とにかくボールの速さ、重さ、破壊力という点で非常に秀でており、試合の中で相手がラケットを弾かれるようなシーンは何度も見てきました。相手はソダーリングのフォアハンドをどれだけ止まって打たせないかと言うことを常に意識させられます。

バックハンドストローク

★10にしようかとても迷いました。

威力は十二分に持ったショットなのですが、やはりサーブとフォアハンドをメインに戦う選手ということと、バックハンドからの戦術の幅を考えて★9としました。一般的な大型パワーヒッターはバックハンドが往々にしてイマイチなのですが、ソダーリングは違いました。

また、バックハンドは左手の使い方がかなり特徴的です。

PARIS, FRANCE – JUNE 01: Robin Soderling of Swedenhits a backhand during the men’s singles quarterfinal match between Rafael Nadal of Spain and Robin Soderling of Sweden on day eleven of the French Open at Roland Garros on June 1, 2011 in Paris, France. (Photo by Alex Livesey/Getty Images)

左手のグリップがとても薄いのがよくわかると思います。
おそらくコンチネンタルくらいの握りなんですが、この握りでバックハンドをしっかりと打てているのは私が知る限りだとソダーリングくらいしかいません。

バックハンドは左手のフォアハンドとよく言われ、握りは大体イースタン~セミウェスタンくらいがスタンダードです。現代テニスでは相手のボールは早くてよく跳ねるので、コンチネンタルではラケットがボールに負け、フェイスが上を向いてしまってコントロールしづらくなってしまいます。

利き手でコンチを使ってスライス以外のショットを打つことすら難しいのに、それが利き手と反対ですからね。もうなんでこのグリップで打てるのかよくわかりません。

左手がコンチということもありフラット系のボールが中心で、コートを広く使うというよりも早くて深いボールで相手を押すような展開がほとんどです。
打ち分けの種類もほとんど↓の図の3種類(深いクロス、センター、ダウンザライン)のみでした。

ショットの幅は狭いものの高い打点でとらえた時のボールは非常に速く、クレーでナダルのフォアハンドをバックハンドで押し込む場面も何度もありました。
このバックハンドがあったからこそソダーリングは多彩な戦術や細やかなスキル、スピードを持っていなくても、世界のトップに立つことができました。

サーブ

非常に高いトスが特徴のビックサーブです、トロフィーポジションを取る時間も長く、とても絵になります。サーブの最速は220キロを超え、多くのサービスポイントを取ることができます。

引用元

ファーストサーブの球種はフラット系を多用しました。
この配球の意図も他のショットと似ており、ワイドに流してオープンコートを作ると言うよりも、センター付近にいいサーブを打ち、3球目をいかに自分が良い体勢で捉えるかということを重視したものです。

リターン

リターンスタッツが飛びぬけて秀でるタイプのプレイヤーではありませんが、単純にストローク能力が高いので大きな弱点になっているスキルでもありません。かなり基本に忠実にセンター付近へ返球することが多く、あまり特筆することのないスキルです。

ネットプレー

うまくありません。日本の一般プレーヤーのボレーが得意ですという方の方がよっぽどうまいと思うくらいうまくありません。

特にバックボレーが致命的で、試合開始前のアップを見てる時点で怪しさ満載です。

タッチ

絶望的です。そもそもスライスやドロップショットをほとんど使わないので見る機会すらありませんが、たまに打たざるを得なくなったタイミングでのスライスなどからはタッチショットの技術をほとんど感じることができません。

パワー

190センチを超える身長、220キロを超えるサーブ、コートのどこからでもエースを取るフォアハンド、Theパワープレイヤーです。パワーのセクションには全く文句のつけようがありません。

単純にフォアハンド、バックハンド、サーブの威力が高いため、多少コースが甘くなったり、展開に難があっても相手はそれをきっかけにすることができないという場面を多く見てきました。(パワーをどのように試合展開に活かしていたかは戦術のセクションで詳細にお話しします)

また、身体にパワーがあるので、多少動かされたり体勢を崩されてもしっかりとした返球を行うことができます。ジョコビッチのように左右に振られてもボディバランスを保って返球するというよりも、体勢を崩されても上体の力で無理矢理良いボールを返球するというタイプの選手です。

スピード

ありません。一度守りを強いられるとボールに追いつかないことが多く、フットワークでしっかり追いついて処理をする場面は正直ほとんど見られません。

スピードに苦手意識があるのか、とれなそうなボールは結構諦めたり、一発逆転に頼ったりしがちです。

戦略

細かなスキルは持っていなかったものの、戦略はかなりしっかりと立てられており、自分の武器を試合の中でどのように活かすかという部分はとても考えられていました。おそらくこのあたりの戦略はコーチのマグヌスノーマンの影響が大きいのではないかと思います。

ノーマンは自身も全仏準優勝するなど戦績十分なコーチで、歴代のコーチングを見る限りだと、ショットの質は素晴らしいのにそれを勝ちに結びつけられていない原石を伸ばすのがとても上手です。

ちなみに、ソダーリングと契約解消後はワウリンカとタッグを組み、グランドスラムタイトル獲得に大きく寄与しています。

パワーアドバンテージを使う

1番はこれですね。世界No. 1クラスの破壊力のあるショットをサーブ、フォア、バックで持っていたので、細かな球種の変化やコースで試合を組み立てるのではなく、試合を通してパワーで相手を押そうという意識が随所に見られました。特にわかりやすいのが以下の二つです。それぞれ解説します。

  • 細かなコースはウィナーを取るとき以外狙わない
  • 展開を遅くする
細かなコースはウィナーを取るとき以外狙わない

スピードのセクションなどでも解説したように、ソダーリングはスピードをほとんど持ち合わせていなかったので、動きながら打つ状況を出来るだけ作らないように、不用意に角度をつけずに試合を展開することで相手からの返球に角度がつきにくくしていました。

下図のように、センターからの返球であれば角度がつきづらいのに対して、コートの端からであれば、かなり角度がつけられてしまいますよね。

展開を遅くする

現代テニスから少し逆行する技術ではあるのですが、一般的に展開が遅くなるほどパワーのある選手に有利になります。展開が遅いということは止まってボールを打つ機会が増えるということです。止まってボールを打ったらより良いボールを打てるのはパワーのある人ですよね。

ソダーリングはフェデラーやジョコビッチのような速い展開を好まず、自身の土俵であるパワー勝負に引き込むため、ポジションを下げてラリーをする展開をよく取り入れていました。

ちなみにこの展開は記事を書いている時点(2021年5月)の現役選手では、ティエムやモンフィス、ワウリンカが当てはまりますね。(ナダルも展開の速いテニスを身に着けてはいますが、本質的にはこちらよりです)

クレーコートのように展開の遅くなりがちなサーフェスではパワーのある選手が有利になりがちなので、全仏の優勝者などはやはりパワーのある選手が名前を連ねていますよね。

技術はなくてもネットへ出る

ボレーのセクションで書いた通り、ボレーの技術はほぼ皆無でした。ただ、試合の中ではネットに出る回数が極端に低かったりするわけではなく、やはりコートの中で自分の形でボールを捕らえられた場合にはネットをそのまま取るケースが多かったです。

例えボレースキルが低くても、コースをついたパワーショットで相手を追い込めばオープンコートに向けて面を合わせるだけのボレーでポイントを取ることができることが多いので、技術がなくてもネットへ出るというのはとても大事なことです。

ネットを取るとやはり相手は返球を足元へ沈めたり、際どいコースを狙ってパスを打つ必要がでてきます。追い込んだ状態でその選択肢を強いることで相手のミスを誘発することができるため、ネットに出る価値は十二番にあります。

逆にネットへ全くでないと相手に返球の選択肢を沢山持たせてしまうため、こっちが攻めているのにムーンボールやスライスでうまくかわされてしまい、なかなか攻めきれないということになってしまいます。

淡々とプレイ

この写真、別に負けてがっくりしているわけじゃないです。ソダーリングの特徴で、チェンジエンドの際に視界をタオルで遮り、水分補給したりしています。

引用元

一般的にパワーヒッターはゴンザレスなどをはじめとして感情の起伏が激しい選手が多い中、ラケットを叩いたり、大きな声で鼓舞したりすることもなく、ただひたすら淡々とパワーショットを打ち込み続けていました。

パワーのある相手は”ノせない”ことがとても大事なのですが、感情の起伏を見せないパワーヒッターはこれがとても読み取りづらく、相手としては戦略をとても立てづらいタイプのパワーヒッターだったはずです。

使用ギア

ラケット:Prestige MP 
ガット:アルパワーラフ 55ポンドくらい
ウェア:lotto
シューズ:lotto

マレーとかジョコビッチは結構プロストックの型が有名なので情報があるのですが、ソダーリングは引退してからそれなりに時間がたってるのと、世界のトップに立ち続けたわけではないので、情報がなくわかりませんでした・・・

ちなみにプレステージの前はラジカルの色のラケットでしたが、明らかにボックス形状でラジカルではないことは明らかでした。

  • ナダルに初めて全仏で勝利した伝説の男
  • まさに腕っぷし1本で並みいる強豪をなぎ倒した

コメント

  1. […] ソダーリングの解説記事でも取り上げましたが、パワーを活かすためにはなるべくテンポが遅い方がよいです。テンポが上がれば上がるほどラケットを振る余裕がなくなるのでパワーを活かしづらくなるためです。 […]

タイトルとURLをコピーしました