ラファエル・ナダルの強さ 徹底解説【土魔人】

選手解説

みなさんご存知キングオブクレー、土魔人ラファエル・ナダル。デビュー当時テニス界を支配していたフェデラーに対しフェデラーとは全く違うゴリゴリのスペインテニススタイルで対抗し、2000年代前半でフェデラーに唯一五分以上の戦績を残すことができていた選手。
それ以外にもリバースフォアハンドやパイレーツスタイルなどの独自のスタイルを貫き、テニス界に大きな影響を与えた土魔人を解説していきます。

この記事でわかること

  • ナダルの戦力分布詳細
  • ナダルが得意とする相手のバックハンドを起点とした展開
  • ナダルはなぜクレーコートで強いのか

10段階評価の考え方

選手評価の記事では共通して以下の10段階評価を用いて解説していこうと考えています。

★×1 :ATPツアー内で最下位レベル
★×2 :ATPツアー内で下位レベル
★×3 :かなりのウィークポイント:相手は積極的に狙う
★×4 :ややウィークポイント:相手は余裕があれば狙う
★×5 :世界で標準的なレベル
★×6 :世界で100位レベル
★×7 :世界で30位レベル
★×8 :世界で10位以内レベル
★×9 :世界でトップレベル
★×10:世界No.1レベル

能力評価

フォアハンドストロークを中心に試合を展開するTheスペインテニスのナダル。
パワーとスピードを兼ね備えており、実はネットプレーも普通にうまい穴のないスキルを持っています。

フォアハンドストローク:★★★★★★★★★★
バックハンドストローク:★★★★★★★★☆☆
サーブ        :★★★★★★☆☆☆☆
リターン       :★★★★★★★★★★
ネットプレー     :★★★★★★★★☆☆
タッチ        :★★★★★★★★☆☆
パワー        :★★★★★★★★★★
スピード       :★★★★★★★★★★
戦略         :★★★★★★★★★☆
キャッチコピー    :土魔人

てにおじ
てにおじ

クレーキング。そのスピードとパワーで相手をなぎ倒すスペインの猛牛のような選手です。スーパーショットも多く見せ、見ていてアツくなる選手です。

フォアハンドストローク

最強です。やはりナダルといえばフォアハンド。フェデラーとタイプは全く異なりますが、世界最高峰のフォアハンドを持っています。スピン量とボールスピードを自由自在に操れており、非常にレベルの高いフォアハンドです。

ボールの種類としては大きく分けて2種類で、試合を作るエッグボールと、エースを取りに行くスピン量を控えめにしたボールです。

エッグボールについてはレフティの特性を最大限に活かし、配球はアドサイドのクロスコート方向に集めています。ボールの深さはナダル自身も語っているようにそこまで追及はしておらず、意外にばらけています。一方でコースについてはサイドラインの近い位置をしっかりとピンポイントに狙うことで、相手のバックハンドをしっかりと突く、というエッグボールの役割を全うさせようという意識を見ることができます。
エッグボールの目的は相手のポジションを下げる、相手に力の入りにくい位置での処理を強いる、ということで、この目的を放たすためにはエッグボールはベースラインぎりぎりよりも少し内側くらいの方が効果的(↓の絵の通り)なので、深さについてはエッグボールについては極端に浅くなったりしない限りは多少ばらけてもよいと私も思います。

もう一つのスピン量を抑えたフォアハンドについては、基本的に逆クロスでの使用が目立ちます。このショットはコース精度が非常に高く、的確にサービスボックスの角当たりを突けています。
ナダルはこの二つのショットを組み合わせて試合を展開していきます。細かい組み合わせなどは今回は戦術のセクションでお話しします。

バックハンドストローク

強烈なフォアハンドの陰に潜んでいますが、ナダルはバックハンドの技術も非常に高い選手で、デビュー以降私は最も強化されたショットだと思います。

デビュー当初はクレーコーターのバックハンドという感じで、相手のバックハンドへの中ロブか、普通のクロスコートへのショット、あとはパッシングくらいしか球種がありませんでした。(★5.5くらいでした。)

その後、ウィンブルドンをとるわけですが、その頃からそれまでの球種に加えて、バックハンドのスライスを有効に使えるようになりました。ナダルのスライスはあたりはそれほど厚くなく、球速もかなり控えめに制御しており、強烈なフォアハンドとの緩急をつける意図を強く持っていると思います。(このとき★6.5くらい)

さらにその2~3年後からテニス界の高速化が進み、ナダルもそれに対抗するためにバックハンドの技術も磨きました。それまであまり使っていなかった早いタイミングでのバックハンドクロス、ダウンザラインをラリーの中で織り交ぜるようになったのです。
高速化の進んだテニス界では、以前のようなバックハンドのままではそこを起点に相手に展開されてしまい、自身のフォアハンドを封じられてしまいます。この展開を打破するため、バックの突き球→コースの甘くなったボールを回り込むというパターンを増やそうとし、早い打点でのバックハンドを磨きました。(ここで★8)

サーブ

普通です。2010年ごろはハードコートでのタイトルを狙ったことから、210キロを超えるようなスピードサーブでエースをねらいに行っていたこともありましたが、やはりストロークを主体に戦う方が気持ち的にも戦いやすいのか、基本的にバックハンドにいれるというサーブに今は戻っています。

リターン

非常に硬いリターンです。ポジションを上げて攻撃したりするようなことはほとんどなく、可能な限りフォアハンドで取り、相手のバックハンド側へ質の高いボールを集め、そこからストロークで展開するということを強く意識しています。

リターンゲームの奪取率はここ10年くらい大体ナダルかジョコビッチが一位です。ジョコビッチがブロックリターンをうまく使って相手の時間を奪って優位にラリー戦を展開するのに対し、ナダルはポジションを後ろ目に取り、バックハンド側へコントロールすることでラリーを優位に展開しようとしています。

リターンの性質は違えど世界1,2のトップリターナーは、リターン一本でどうにかしようとしていません。この心がけは一般プレイヤーも見習いたいところです。

ネットプレー

うまいです。めちゃくちゃ基本に忠実なボレーです。世界トップクラスのストロークを中心に試合を展開するため、ボレーについてはやるべきことが最低限出来ればよいという意識でいるように見えますし、試合の展開もボレーで勝負するような展開にはほとんどなりません。

ただ、結構マジでボレー上手いです。ダブルスとかも普通に全然できています。

タッチ

クレーコート育ちの選手らしく、ドロップショットやアングルなど、コートを立体的に使うためのスキルは高いものを持っています。ただ、タッチを売りにして試合を展開するというよりも、あくまで試合展開の軸となる強力なストロークとのギャップで緩急をつけるために使用するということにとどめています。

フォアバック共にドロップショットを放てますが、フォアハンドは強打できる場面であればコートのどこからでも使用するのに対し、バックバンドはアプローチショットを放つサービスライン近くからの使用が目立ちます。

ナダルのフォアハンドは世界最高峰のため、体勢を作ると相手はどうしてもポジションを下げたくなる、そこをつくというわけです。反対にバックハンドはフォアとは異なり、体勢を作ったとて相手はポジションを下げません。そこにドロップを放っても効果を出しにくいので、よりネットに近い場所からのドロップをバックサイドでは使用しています。

パワー

あのものすごい回転量のスピンボールをコートのどこからでも放てるナダルにパワーがないはずがありません。ナダルとがっぷり四つのパワー勝負ができるのはATPツアー内にもほとんどおらず、私がこの記事を書いている時にTOP100をチラ見した感じだと、ティームとワウリンカくらいな気がします。それ以外の選手はやはりどうしてもナダルのパワーにだんだんと押され、コートの後方へ追いやられていく試合展開が多くなっていきます。

また、練習中のボールスピードがめちゃくちゃ速いことでも有名で(アウトしてもいいから長くて強いボールを打つことを意識して練習に取り込むことが多い)、いつしか楽天オープンに出場するために来日した際、日本のトップ選手がヒッティングパートナーとなったものの、ボールのスピードと変化量についていけずにラリーがうまくつながらなかったため、ヒッティングパートナーが他の選手に変わったという逸話もあるくらいです。

肉体の筋肉量自体は、デビュー当初2005年くらいが最もありましたが、それ以降ヒザの負担等も考慮して少し軽量化しています。しかしそれとは裏腹にボールのあたりは年々厚さを増しており、ボールのキレ、スピードなどは近年の方が高く、クレーコート以外での勝率の向上にも寄与しています。

さらに、そのパワー(+フォアハンドの技術)から、スピンを主体とする選手が一般的に苦手とするスライスなどの勢いのない低いボールをうまく使う選手に対しても特に苦にすることなく戦えています。スピンはボールを飛ばす方向への力がドフラットに比べれば当然低いので、勢いのないボールへの対応は実はかなり苦手です。
しかしナダルはで特別で進行方向に足りないパワーを補うだけの腕力/スイングスピードがあるため苦にしていません。もう凄い。

スピード

スピードも非常にあります。単純な足の速さだけであればおそらくデビュー当初が最も早かったと思いますが、年を重ねるごとに予測力などが向上し、スピードトータルとしての評価は依然として世界トップのものを持っています。

クレー育ちということもあり、特にクレーコートでのフットワークは抜群です。また、↓の絵のように足が速くかつパワーのある選手しか使えないコート後方にポジションを下げながら返球するフットワークも稀に見せます。(赤い●がナダル、青い●がフェデラーの解説でもお話しした現代テニスのフットワーク)

赤い●のボールの追い方って現代テニスにおいては基本的にタブーなボールの取り方なんです。なぜかというと

①後ろに下がるとボールはより自分から遠ざかり、追う距離が長くなるから
②パワーが進行方向(後ろ)に流れるので、強い返球ができないから

ただし、後ろに下がることによる自分からボールが離れる速度よりも、自分がボールに近づく速度の方が早く、体が流れても返球できるパワーがあれば、この限りではないんです。ナダルはこの二つを持ち合わせているため、このフットワークが成り立っています。(タブーであることは変わらないので、積極的に使っているわけではありませんが、咄嗟に出たりはしています)

戦略

コートを空けてもその分強いショットを打ち、フットワークを使って戻ればよいというスペインテニスのシンプルな軸の上に成り立つナダルのテニスはフォアに始まりフォアに終わります。

マワリコンデフォア

フェデラーやナダルがデビューする以前はサイドラインまで回り込んでフォアハンドを使うという戦術はそれほど一般的ではありませんでした。当たり前ですが大胆に回り込むということはそれだけコートを空けてしまうので、まあほどほどにしようね。という空気でした。

しかしナダルがコートを空けてもそれを補って余りある質のショットを放てば問題ないということを実演し始めて以降、全世界でフォアをより効果的に使うという戦術が広まりました。

もはやそれがテニス界のスタンダードとなった今では、フォアハンドとバックハンドのスキルが同じレベルの選手も、攻撃する時は当然のように大きく回り込んでフォアハンドを使うようになりました。

バック攻め

ナダルの最も有名な戦術ですね。フォアハンドの強烈なスピンを使って相手のバックハンドの高い打点を突くというものです。ジョコビッチやマレー、ナルバンディアンなどのバックハンドの高い打点を苦にしない選手以外はこの戦術一辺倒でかなり苦しめられています。(現在進行形)

また、この回り込みを使ったナダルのプレーとクレーコートの相性がとてもいいんですよね。順を追ってみていきましょう。

ナダルの基本ポジションとバック攻めの使い方

基本的にナダルはコートの7~8割くらいをフォアハンドで取ります。
赤い矢印がフォアで取る部分、青い矢印がバックハンドで取る部分です。

このポジション取りを展開にどう使うかというとこんな感じに使います。
①球目:センターマークからやや右手側のボールを回り込みフォアハンドのスピンボールを使い相手のバックハンドへ
②球目:相手は球威に押され、クロスコートへ引っ張り切れず、センター付近へ返球
③球目:回り込んで逆クロスへ展開

もうこれほんとに鉄板ですね。誇張抜きにこのパターン今まで数千回見てる気がします。(4桁は間違いない)

クレーコートとの相性

冒頭でこの戦術とクレーコートとの相性のお話もしましたが、どう相性がいいのでしょうか。
クレーコートの特徴になぞらえて解説していきます。

特徴その1:球足が遅い
球足が遅い→相手から展開されたボールを拾える範囲が広くなる→コートを大胆に空けてもリカバリーできる範囲が広い→たくさん回り込める

特徴その2:バウンドが高め
バウンドが高い→高く弾ませるボールが有効→ナダルのスピンショットは威力がさらに増す

特徴その3:イレギュラーしやすい
イレギュラーしやすい→ライジングでボールを打ちづらい→相手はポジションを下げる傾向→打点が高くなり、力が入りづらい打点での対応を強いられる

クレーコートとナダルの良い部分というのは完全にマッチしています。

でも、この戦法はクレーコート以外ではどこかのエッセンスが欠けるので、有効度はクレーほどは出なくなります。じゃあナダルクレー以外勝てないか?バックハンドを高い打点でも引っ張れる人には勝てないか?そんなことないですよね。ナダルも相手の1歩先、2歩先を読んだ戦術をまだまだ持っています。それがバック攻め破り破りです。↓

バック攻め破り破り

ひとつ前のセクションでお話しした戦法はバックの得意な選手には破られることがあります。つまり、↓の展開を安定的に展開できる選手です。
①球目でスピンを使ってバックの高いところをついたものの、②球目で相手にバックハンドの高い打点からクロスへしっかり展開されてしまうパターンです。

これにナダルはどう対抗するか、バック攻め破り破り(どっかのボクシング漫画で同じようなフレーズを見たことがあるような・・・・)です。

つまりこういうことです。バックハンドというショットはスイングの自由度がフォアハンドに比べて低く、強打するためにはフォア以上に体を使う必要があります。
当然、その自由度の低いバックハンドから横に振られた状態で強打すると、体がコートの外方向へ流れます。このタイミングを見計らってナダルはポジションを上げて、相手の返球をストレートへ展開するのです。

この展開は特に対ジョコビッチでよく見せており、ジョコビッチもこの展開をかなり警戒しています。このパターンで失点すると
「もうこの展開何回目だよ!いい加減学習しろよ!!!」
みたいな顔を見ることができます。楽しいですね。

使用ギア

ラケット:バボラピュアアエロ(の形をした2005年アエロプロドライブのモールドのプロストック品)と言われています。↓

ガット:RPMブラスト135mm 55ポンドくらい
ウェア:ナイキ
シューズ:ナイキ

ナダルデビュー当初はもう廃盤になっているデュララストという1ロール1万円くらいのめちゃくちゃ安いガット使ってました。(黄色いキラキラしたガット)

あと、グリップの巻き方も結構無頓着らしく、右利き用のグリップテープの巻き方で使っています。うーんワイルド。

  • フォアハンドのトップスピンを自由自在に操る土魔人
  • マワリコンデフォア、バック攻め破り破りなどのフォアハンドの多彩な攻撃パターン

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